大判例

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最高裁判所第二小法廷 平成5年(オ)1761号 判決

上告人

片山義高

萬世工業株式会社

右代表者代表取締役

片山龍太郎

右両名訴訟代理人弁護士

後藤茂彦

河合信義

奥原喜三郎

馬越節郎

水谷彌生

田中圭助

奥村裕二

羽野島裕二

被上告人

オレゴン州組合ノースコンⅠ

右代表者組合員

デビッド・エル・ブライアント

右訴訟代理人弁護士

櫻木武

佐藤典子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人後藤茂彦、同河合信義、同奥原喜三郎、同馬越節郎、同水谷彌生、同田中圭助、同奥村裕二、同羽野島裕二の上告理由について

一  本件は、被上告人がアメリカ合衆国のカリフォルニア州裁判所の判決についての執行判決を求める訴えであるところ、原審が適法に確定した事実等は、次のとおりである。

1  カルフォルニア州上位裁判所は、昭和五七年(一九八二年)五月一九日、被上告人と上告会社の子会社である同州法人マルマン・インテグレイテッド・サーキット・インクとの間の賃貸借契約締結について上告人らが被上告人に対して欺罔行為を行ったことを理由として、上告人らに対し、補償的損害賠償として四二万五二五一ドル及び訴訟費用として四万〇一〇四ドル七一セントを支払うよう命ずるとともに、上告会社に対し、これに加えて懲罰的損害賠償として一一二万五〇〇〇ドルを被上告人に支払うよう命ずる判決(以下「本件外国判決」という。)を言い渡した。

2  上告人ら及び被上告人は、本件外国判決に対してカリフォルニア州控訴裁判所に控訴したが、同裁判所は、昭和六二年(一九八七年)五月一二日、各控訴を棄却する旨の判決を言い渡し、本件外国判決が確定した。

3  カリフォルニア州法上、判決によって支払を命じられた金員について、判決言渡しの日から、昭和五八年(一九八三年)六月三〇日までは年七パーセント、同年七月一日からは年一〇パーセントの割合による利息が発生し、右の利息についても執行することができる旨、規定されている。

二  原審は、本件外国判決のうち、上告会社に対して懲罰的損害賠償の支払を命ずる部分を除き、上告人らに対して補償的損害賠償及び訴訟費用の支払を命ずる部分並びに右金員に対する昭和五七年(一九八二年)五月一九日から昭和五八年(一九八三年)六月三〇日までは年七パーセント、同年七月一日からは年一〇パーセントの割合による利息(以下「本件利息」という。)について、本件外国判決による強制執行を許すべきものとした。

三  執行判決においては外国裁判所の判決による強制執行を許す旨の宣言がされ(民事執行法二四条四項)、確定した執行判決のある外国裁判所の判決によって強制執行が行われることになる(同法二二条六号)。こうした制度によると、執行判決において強制執行を許す旨を宣言するのは、外国裁判所の判決に記載された内容に限ることが原則であるというべきところ、本件利息については、本件外国判決には記載されていない。しかし、判決によって支払を命じられる金員に付随して計算上明らかな利息が発生する場合に、その給付についても判決自体に記載するか、又は判決には記載せず法律の規定によってこれについても執行力を認めることにするかは、技術的な事柄であるということができる。そして、我が国において外国裁判所の判決の効力を認めるということは、その判決が当該外国において有する効果を認めることである。本件利息は、カリフォルニア州法上、判決によって支払を命じられた金員に付随して発生し、執行することができるとされているものであるから、本件利息も付加して、本件外国判決のうち補償的損害賠償及び訴訟費用の支払を命ずる部分の強制執行を許した原判決は、正当として是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官大西勝也 裁判官根岸重治 裁判官河合伸一 裁判官福田博)

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